「アテンションタイム」とは? そして、なぜ広告キャンペーンにとって重要なのか?

モバイル広告に注目してもらうことは、かつてないほどに難しくなりました。ここでは「アテンションタイム」とは何か、そしてモバイル広告を出稿する際に考慮すべき理由についてご説明します。

現代の私たちは、前例がないほどの膨大な広告やコンテンツにさらされる時代を生きており、集中力を持続できる「アテンションスパン」は非常に短くなりました。マイクロソフトの調査によると、人々のアテンションスパンはわずか8秒で、数年間で25%も縮まったといいます。

またフェイスブックの調査によると、米国では94%の人々がモバイルを手にしながら視聴していることが明らかになりました。つまり視聴者が「画面を見ている」とされる時間であっても、彼らの注意を引くために複数のソースが争奪戦を繰り広げる傾向がますます強まっているのです。

では、適切な人から確実に注目されるモバイル広告にするために、広告主は何をすればよいのでしょうか? そして、キャンペーンの効果を正確に測定するには、どのようにすればよいのでしょうか?

モバイル広告キャンペーンの効果測定の未来はアテンションタイムにかかっていると、私たちは考えています。

アテンションタイムとは?

広告主がデジタル広告に費用を投じるということは、単にデジタル広告の枠を入札しているだけではなく、理想とする顧客からのアテンション(注目)を集めるために競っているのです。そして広告主にとって最大の課題は、このアテンションを効果的に測定することです。

従来は、測定に「ビューアビリティ(視認可能性)」という指標が用いられていました。メディア測定評議会(Media Rating Council)とインタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau)は、広告のビューアビリティの業界基準で合意しています。この基準では、広告のピクセルの50%以上が1秒以上表示される必要があること、動画広告についてはピクセルの50%以上が2秒以上連続表示される必要があることなどが定められています。

しかしこの指標は「視聴行動」という、大きな問題を抱えています。多くの人々はコンテンツを切り替えることに慣れています(例えばテレビを観ながらスマートフォンをスクロールするなど)。つまり、理論的には画面上で表示されている広告であっても、それが必ずしも見られているとは限らないのです。

広告の実際のパフォーマンスを測定する指標としては、アテンションタイムの方がはるかに優れています。これは広告が表示されているとされる形式上の時間の長さではなく、ユーザーが実際にどれだけ広告に注意を払ったかを測定するものです。

アテンションタイムが、効果測定の指標として優れている理由

データやインサイト、コンサルティングで世界をリードするカンター(Kantar)は、アテンションタイムがパフォーマンス測定の指標としていかに寄与するか、調査を実施しました。

この調査によると、アテンションタイムをとらえたキャンペーンは認知度が25%高く、またアテンションタイムが長くなるほど認知度も高くなったといいます。またアテンションタイムを獲得したキャンペーンは、想起率も平均79%上昇しました。

そしてビューアビリティと比較すると、アテンションタイムは予測因子として認知度向上には7倍以上、想起率上昇には約6倍の有用性を発揮すると、この調査は結論付けています。

アテンションタイムの計測方法

もしアテンションタイムが非常に重要で、ビューアビリティよりもはるかに効果的ならば、どのようにすればアテンションタイムを正確に測定できるのでしょうか?

既にご説明したように、残念ながら、マーケターが広告の判断材料としてきた従来の指標では、アテンションタイムの測定に十分な全体像をつかむことができません。

ユーザーがスマートフォンを使用しながらマルチタスクをこなしていることも、広告を含むフィードをスクロールするスピードも、明らかになっています。つまり、従来のビューアビリティと、広告が実際にどのくらい見られているのかには、ギャップがあるのです。

ユーザーが広告にどのように触れているのか、そして実際に広告を見ているのか(そして気づいているのか)、あるいはスクロールして見過ごしたり、何か他のことに意識を向けているときにスクリーンに表示されているだけなのか。この本当のところを倫理的に把握するにはどうすればよいかという、大きな問題に広告主は直面することになるのです。

アイトラッキング技術が、ソリューションとして十分でない理由

この問題を解決するため、一部の広告主はアテンションタイムの測定に、アイトラッキング(視線追跡)技術を使用し始めています。しかし、これにはプライバシーの問題が発生します。視線の動きをとらえるにはスマートフォンのカメラにアクセスし、ユーザーの顔の画像を検出する必要があるためです。

アイトラッキング技術は長らく、プライバシーの問題が懸念されてきました。ヴァイス(Vice)は「深刻なプライバシー上の懸念がある」と指摘し、「目の動きは、主に無意識なもの。企業がそのデータを収集してもユーザーは気付かないだろう」と記しています。

プライバシーの問題を考慮すると、当局が将来この技術の使用を取り締まると考えるのが自然です。したがって、アイトラッキングを中心に据えた測定ツールの構築は賢明ではないと、私たちは考えています。

正確なアテンションタイムを測定するために使用する5つの指標

では、どのような解決方法があるのでしょうか? アイトラッキング技術を使わずに、アテンションタイムをどのように測定すればよいのでしょうか?

私たちの経験から言うと、単体の指標に依存することはできません。そこで、アテンションタイムを測定するための、独自かつホリスティック(全体的)な方法を開発しました。

私たちのソリューションは、クリエイティブのパフォーマンスを詳しく把握するため、5つの指標によって構成されています。

  1. ビューアビリティ:広告は表示されているのか?(広告ユニットが最初にビューアブルだと見なされたときに反応)
  2. 表示時間:どれくらいの時間、広告が表示されるのか? (広告ユニットが表示されていた合計時間をミリ秒単位で、フィールドに格納)
  3. 滞在時間:ユーザーはどれくらいの時間、ウェブページに滞在していたのか? (ユーザーがページ/ウィンドウ/タブにフォーカスしていた合計時間)
  4. インタラクション・イベント:ユーザーによる(誤クリックではない)操作があったのか? (クリックやクリエイティブ内でのスクロールなど、ウィジェットに割り当てた動作が実行されたときに反応)
  5. インタラクション率:インプレッションごとにユーザーが行った操作の割合

キャンペーンの最適化は、これら5つの指標をすべて注視して行います。ビューアビリティが高いからといって、必ずしもインタラクション率が高いとはいえないということを、経験から学んできたからです。

インタラクション・イベントは、アテンションのパフォーマンスを測る上で重要な指標といえます。そのためレポートに記録し、最適なパフォーマンスを発揮するクリエイティブや広告在庫に基づいて最適化を行います。

また、これらの指標の測定に加えて、可能であればブランド調査を実施し、想起率、認知度、検討度、クリエイティブのパフォーマンスを調べることが望ましいでしょう。


(また当社では、広告が効果的なアテンションタイムを得られるよう担保しています。詳しい方法についてはこちらをご覧ください)

ビューアビリティだけでなく、本当に注目されているのか、測定し始めましょう

デジタルメディアにおいて、アテンションタイムという指標は最近まで見過ごされてきました。しかしこの指標が、クライアントがより良い成果を出すために非常に重要であることは明らかです。いかなるKPIを計測しようとも、アテンションを獲得せずにパフォーマンスを向上させることはできないからです。

向上させたいものは認知度なのか、あるいは検討度、想起率、売上なのか。いずれにしても、成果を出すための最初のステップはアテンションのモニタリング、最適化、そして測定だと私たちが考えているのは、以上のような理由からなのです。

広告のビューアビリティの担保はもちろんのこと、アテンションタイムを確実に追跡する方法について、詳しく知りたい方はぜひお気軽にお問い合わせください