消費者はCookieを受け入れるべきか否か?

ウェブサイトにアクセスする際に、Cookie利用は同意するべきなのか、あるいは拒否した方がよいのか? そして、これがなぜ私たちにとって重要なのか? 消費者に及ぼす影響について、ご説明します。

ウォールアンドケース(Wahl+Case)のマーケティング、広告、カルチャーの接点を探るポッドキャスト「M/ADカルチャー(M/AD Culture)」に、クリムタンのJAPACコマーシャルディレクターであるジョシュア・ウィルソンが出演し、消費者が自身の個人情報を管理するべき理由を語りました。

M/ADカルチャーは、ウォールアンドケースのマーケティングスペシャリストであるブライアン・リオス氏と、電通のアナリティクス&イノベーティブソリューションズ担当ディレクターであるジョシュア・グラント氏がホストするポッドキャストシリーズです。

この記事では、ポッドキャストでジョシュア(・ウィルソン)が語った重要なポイントについてまとめています。

  • プライバシーが話題になっている理由
  • ファーストパーティーCookieとサードパーティーCookieの違い
  • Cookieが優れている理由と、広告主がより良い成果を得る方法
  • 広告が無いと、消費者はどれだけの代償を支払うことになるのか
  • Cookieを受け入れるべきか否か
  • Cookieレスを実現する、プライバシー保護のための独自のソリューション

プライバシーが話題になっている3つの理由

プライバシーが今これほど話題になっているのには、主に3つの理由が挙げられます。1つ目は、法律です。消費者データを野放図に収集できる時代は、終わった

のです。

「暗黙の同意」は過去のものとなり、消費者データの収集には「明示的な合意」を必須とする新しい法律や政策が施行されました。欧州のGDPR(一般データ保護規則)や米国のCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)に追随して、アジア太平洋地域をはじめとするさまざまな国でも導入が進み、より厳格な政策が施行され始めています。

2つ目は、消費者からの要求です。フェイスブックのザッカーバーグ氏がユーザー情報の使用について米上院公聴会で次々と質問を浴びせられる様子が広く報道されたことや、アプリのトラッキングを擬人化したアップルのCMなどによって、消費者はインターネットで起こっていることについて詳しく理解するようになりました。

3つ目は、テクノロジー企業がようやく交渉のテーブルに着き、これらのトレンドや変化に対応するための法律と向き合う方法を模索し始めたことです。

残念ながらマーケティング業界は、データを収集する理由やそれがもたらす利点について、消費者に十分な説明を果たしてきたとはいえません。

従来メディアで広告主は多くの視聴者にリーチすることが可能ですが、表示されるメッセージのカスタマイズや高度なパーソナライズはできません。デジタル広告ではこれらの機能を、データを使用することで活用できます。広告主はより多くの情報を得て、広告予算をより効率的に費やすことができるのです。

データによって、広告主はコアなターゲットオーディエンスに対し、最も関連性の高いメッセージを届け、シームレスなオンライン体験を作り出すことができるようになりました。広告主が予算をより効果的に使うことができるようになっただけでなく、消費者が興味を持ち、必要としている製品・サービスの広告が表示されるようになったのです。

ファーストパーティーCookieとサードパーティーCookieの違いとは?

Cookieには主に、ファーストパーティーCookieとサードパーティーCookieの2種類があります。

ファーストパーティーCookieは、パブリッシャー(ドメイン)のサイトから直接発行され、ログイン情報、クレジットカード情報、カートに入れた商品などの情報を記憶します。同じサイトにアクセスするたびに情報を再入力する必要が無いため、消費者にとって有益でしょう。

サードパーティーCookieは、複数のドメインにまたがって追跡するもので、一般的には消費者が知らないうちに追跡が行われます。Cookieへの恐怖感を生み出す原因の一つは、どのような個人情報が収集され、保存されているのかが分からないことにあります。最近施行された法律や、アップルのiOS 14グーグルの発表などは、サードパーティーCookieを排除することを目的としています。

Cookieが優れている理由と、広告主がより良い成果を得る方法

では、ウェブサイトにアクセスする際に、Cookieを受け入れるべきなのでしょうか? ポッドキャストでブライアン・リオス氏は、ウェブサイトのCookieを受け入れるか拒否するかの検討に時間をとるようになったと語ります。

リオス氏はロサンゼルスに住んでいた頃、どこに行くにも自動車で出掛けていました。ある時、彼をターゲットとするジム用バッグの広告が表示されました。しかし当時はジムで必要な持ち物はすべて車に積んでいたため、バッグは必要ありませんでした。

しかし日本に引っ越すことになり、ジム用バッグが必要になることに気付きました。ソーシャルメディアのフィードを数日間スクロールしたものの、その広告を再び見つけることはできませんでした。

この経験がきっかけとなって、自分の興味やニーズに合致した製品の広告を見かけることがあるのに気付いたといいます。

広告の観点に立つと、ユーザー体験の向上のためにマーケターにできることは数多くあります。リオス氏のケースでいうと、最初に興味をひかれたジム用バッグのブランド名を思い出すことができなかったので、ブランドにとっては潜在的な販売機会を損失したことになります。リオス氏にとっては、当初興味を持ったスタイルからは妥協せざるを得ませんでした。

残念ながら、ターゲティングにデータを活用する能力があっても、そこに必ずしもメッセージの品質が伴うとは限りません。中には、ユーザーがショッピングサイトで最後に閲覧した商品やアフィニティ(ブランドや製品への親近感)などに基づいて、消費者をターゲティングすることのみに専念する広告主もあります。

これが原因で、消費者は無関心で不愉快なオンライン体験にイライラさせられるのです。シームレスなカスタマージャーニーを実現するには、消費者がジャーニーのどこにいるのかを広告主が把握し、クリエイティブとデータを統合して関連性のある体験を構築することが重要なのです。

広告の無い世界で暮らすために、消費者が支払う代償は?

広告が嫌いな人もいるでしょう。そもそも、なぜ広告が存在するのでしょうか? 広告によって、企業はターゲットオーディエンスにリーチすることができ、パブリッシャーの運営も支えられます。たとえば私たちがニューヨーク・タイムズの記事を無料で楽しむことができるのは、ライターの原稿料やコンテンツ制作費などが広告収入によって賄われているからです。

この仕組みをきちんと理解する人たちもいますが、それでも人々はブラウジングを邪魔されないよう広告ブロッカーをインストールしています。もしすべてのユーザーがそのような行動をとると、お気に入りのウェブサイト、コンテンツクリエイター、アプリなどは、もはや「無料」ではなくなり、インターネットは今とはまったく違った見え方になるでしょう。もし広告の無い世界に暮らすのであれば、私たちが支払う代償はどの程度になるのでしょうか? ヴォックス(Vox)の記事によると、ユーザー1人あたり毎月35米ドル(約5,300円)になるといいます。広告の無いインターネット体験のために、その金額を支払いますか?

では、Cookieは受け入れるべきなのでしょうか?

Cookieを受け入れるべきか、拒否するべきかで迷うのであれば、まずはアプリやインターネットの日々の使用状況を確認してみましょう。どのようなアプリを何のために使っていて、それが生活をどの程度便利にしているでしょうか?

たとえば、ウーバーイーツ(Uber Eats)や配車アプリを頻繁に利用しているのであれば、これらのアプリに追跡を許可すると、位置情報やお気に入りの飲食店に基づいて似たようなレストランを提案してくれるので非常に便利でしょう。

ただし、ニュースやゲームなど多くのアプリは、追跡の許可はあまり役に立たないかもしれません。

「このアプリやブランド、ウェブサイトが私のことをもっと深く知ると、より良い経験が得られるだろうか?」と自分自身に問いかけることが重要だと、ジョシュア・グラント氏は強調します。もしこの問いへの答えがイエスなのであれば、Cookieを受け入れてもよいでしょう。もしも答えがノーで、得られる経験が一般的なものでも構わないのであれば、Cookieを拒否しても問題ありません。

インターネットを無料で楽しむことができるのは、広告があるからなのです。

Cookieレスを実現する、プライバシー保護のための独自のソリューション

英国で設立したクリムタンは、GDPRに準拠するようプラットフォームを適合させ、投資する必要がありました。それがCookieに代わる独自のソリューション「ActiveID」の開発につながりました。

このソリューションの根幹にあるのは、ユーザーのプライバシーを最優先に保とうという考えです。消費者を起点とし、同意を取得した上で広告を配信することに重点を置いています。ActiveIDはクライアントのウェブサイトに常駐し、CMP(同意管理プラットフォーム)と接続します。クリムタンが広告配信のためにデータを利用することの可否を、ユーザーは選択できるのです。

プライバシーや、ユーザーのデータについて、詳しくは以下のポッドキャストをご覧ください。

顧客体験を向上させる方法を、お探しでしょうか? 詳しくは、ぜひお気軽にお問い合わせください。

ウォールアンドケース(Wahl+Case)について

ウォールアンドケース(Wahl+Case)は東京を本拠とする人材紹介エージェントです。日本のテクノロジー産業に焦点を当て、国内外の企業と連携を取っています。BtoCテック、BtoBテック、アドテク、フィンテックなどさまざまな分野の、技術系および非技術系のポジションを扱っています。

筆者について

ジョシュア・ウィルソンのデジタルマーケティングのキャリアは、2013年にソーシャルネットワークとモバイルDSPでブランドのプロモーションを行うアフィリエイトマーケティングビジネスを開始したことから始まりました。その後、コンテンツの分野に進み、ブランドと協業してオンラインプレゼンスの確立とコミュニティの形成を支援しました。

2015年、クライアントサービスマネージャーとしてクリムタンに入社し、APACビジネスの知識を活かして従事。2018年、東京に移り、クリムタン日本オフィスを開設しました。現在はJAPACのコマーシャルディレクターとして、クリムタンのローカルおよびインターナショナルで能力を促進する地域のオペレーションを統括しています。